2010年代初頭、クラウドは注目はされていましたが消費者にとっては今ほど主体ではありませんでした。
2012年頃、よく分からないけど便利だからDropboxを使っていた私は何故か情報弱者と言われました。
ところでクラウドベースのノートとして有名なサービスがありますよね。
そう、Evernoteです。
世界中で愛されている多機能メモアプリEvernote。
2023年1月時点でのユーザー数は、2億2,500万人にまで上ると発表されています
Evernoteは2008年にリリースされ、クラウド上でノートを保存し、同期する機能を提供しました。
この当時、クラウドベースのノート管理はまだ新しいアイディアであり、Evernoteはその分野において先駆けでした。
そしてEvernoteは多くの機能や利便性から、ノート、メモアプリとして絶大な人気を誇りました。
しかしそのEvernoteはオワコンとまことしやかに囁かれ、他のサービスへ移行したとの声が絶えません。
なぜユーザーは離れたのか。
Evernoteの全盛期は、おおよそ2010年代初頭から中頃にかけてでした。
この時期、Evernoteは急速に成長し、多くのユーザーに支持されました。
クラウドベースのノート管理はどのデバイスからもアクセスでき、利便性が高い物でした。
他にもクロスプラットフォーム対応し、EvernoteはWindows、Mac、iOS、Androidなど様々なプラットフォームで利用でき、同期がスムーズに行えました。
Evernoteはテキスト、画像、音声、リンク、PDFなど、多彩なコンテンツを保存できる機能を提供しました。
特にOCRといい、画像の文字を検索できる機能、PDFの内容を検索できる機能など、ユーザーの情報整理を効率化しました。
とりあえず情報を放り込めば、どのデバイスからもアクセスでき、検索してパッと取り出せる。
Evernoteは第二の脳とまで言われました。
他にもモバイルアプリも出来が良かったのです。
スマートフォンやタブレットからのアクセスをサポートするEvernoteのモバイルアプリは高評価で、移動中や隙間時間にノートを取ったり、確認するときに便利でした。
そしてEvernoteはたちまち人気になり、ユーザー同士の情報共有やプラグインの開発が活発でした。
ここまで強力なEvernoteはいつから衰退したのでしょうか。
話は遡ります。
Evernoteを最初に作ったバチコフは、ソ連の
科学者時代に、失われつつある文化を目撃しました。
そして記憶に固執するようになったのです。
それに同調したリビンは手を組み、一緒に会社を作りました。
経営者としての才覚を見出したバチコフは、リビンにCEOの座を譲りました。
「これからはモバイルの時代だ、いや、そうなって貰わなくては困る!」
リビンにとっていつでもメモを記録し、検索できるモバイルは欠かせない物でした。
しかし当初はiPhoneが発売する1年前。
賭けだったとリビンは回想します。
そして準備万端だったモバイルアプリの出来は素晴らしい物でした。
リビンは、ユーザーからお金をむしりとることより、ユーザーに使って貰うことを重視していました。
しかし投資家はそのやり方に疑問視し、投資をやめます。
Evernoteは3週間分の現金しかありませんでした。
しかし、スウェーデンのユーザーが50万ドルの寄付をしてくれて乗り切りました。
そしてEvernoteは拡大していきます。
資産価値は20億ドルにまでなりました。
しかしここから迷走が始まります。
リビンはバグを放置し、Evernoteモレスキンノート、Evernoteバックパックなどの製品を売りました。
これはサービスの改善を図らないことからユーザーから反発を買いました。
そして2015年には40%値上げし、リビンも辞任しました。
変わってCEOとなったオニールはEvernoteの再建を図り、無料版ユーザーの機能を制限しました。
2台までのデバイスでしか使えない、ストレージは毎月60MBまで*
これには多くのユーザーが反発しました。
さらにプライベートなメモがEvernote社員は読めることが発覚しました。
2018年8月に行われた大規模な再建は同社の新たな目的意識を体現するものでした。
ロゴデザインを変えるなどEvernoteの新しい試みでしたが、会社の根本的な問題を解決することはできませんでした。
そして役員が次々と離れてしまいました。
これは問題を抱えた企業であることを世間に知らしめただけではありません。
会社が完全に道を踏み外してしまったことを示していました。
誤った方向に進み既存のユーザーは不満を抱え新規ユーザーは参入しなくなりました。
2023年5月には月額費用を420円、年間費用は3,500円値上げをしました。
ユーザー離れは加速します、
Notion、google keep、onenote、paper、upnote、bear、Appleのメモ…
他にも様々な優秀なメモアプリ。
これらに乗り換える人が後を絶ちません。
こうして全てを記憶できるように作られたEvernoteは、皮肉にも人々から忘れられつつあると言っても過言ではないかもしれません。